Qalb al Asad (カルブ・アル・アサード):猛獣骨格レプリカ&軍事・歴史関連商品のEショップ

当店のライオン、トラなどの骨格は博物館レベルの標本。ミリタリー関連は米英などから直輸入の本物志向。Qalb al Asadとはアラビア語でlion heartの意味。

ロシアとイランでトラとヒョウの交換

現在、ロシアに生息するシベリアトラとイランに生息するペルシアヒョウを交換して野生に戻そうという話が進んでいます。どういうことかと言うと、ロシア極東地域に住むシベリアトラが、カフカス山脈からカスピ海南岸、アフガニスタン北部、中央アジアにかけて生息していたカスピトラの遺伝子がほとんど同じである。一方でロシアではカフカス地方から黒海方面に生息していたペルシアヒョウが絶滅している。そこで両者を交換して野生に復帰させようというものです。

 

先のソチ冬季オリンピックプーチン大統領がメディアの前でヒョウの子を抱いていたのはよく知られています。問題はシベリアトラとカスピトラは全く同一なのかということです。かつてはモンゴル北西部のアルタイ山脈周辺で中央アジア方面のカスピトラとバイカル湖方面のシベリアトラは互いに行き来していたと考えられています。しかし人類の進出で両者の生息域は分断されました。カスピトラは1950年代から70年代にイランで絶滅した一方、シベリアトラはロシアのアムール川流域を中心に中国の満州北朝鮮にわずかに生き残っているに過ぎません。

 

つまり、これだけ生息環境も違ってくると、遺伝子はきわめて近くても両者が全く同一なのかという疑問は残ります。事実、カスピトラには細い縞が数多くあったとされていますが、シベリアトラの縞はそれほど細くもなく、数も多くありません。下の画像で両者の尾を示しましたが、左のカスピトラと右のシベリアトラは違います。

 

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イランのシャヒド・ベヘシュティ大学のバーラム・キアビ教授は、シベリアトラとカスピ(ペルシア)トラの遺伝子は非常に近いが全く同じではないと答えています(”Russia, Iran Big Cat Swap Raises Questions”; Environment News Service; May 24, 2010)。いずれにせよシベリアとイランでは気候が違いすぎます。イラン北部のカスピ海沿岸に再導入する計画だそうですが、そこでもアムール川流域よりは温暖になります。また獲物を捕食しなければ生きられないので、大型肉食獣の野性化は非常に難しいです。悪くすると再導入されたトラが家畜襲撃の常習犯にさえなりかねません。

 

絶滅した動物が戻ってくることは素晴らしいです。しかし、そうした動物がかつての生息地で再び生活するには多くの障害があります。

 

 

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