イギリスは陸軍だけロイヤルを冠さない
イギリス海軍の別名がロイヤル・ネービーであることはよく知られています。空軍も同様にロイヤル・エアフォースと呼ばれます。それに対して陸軍は決してロイヤル・アーミーと呼ばれません。ロンドンの国立陸軍博物館のホームページには次のように記されています。
我が陸軍は海軍や空軍と違ってロイヤル・アーミーとは呼ばれていませんが、それは議会と王家との歴史的な抗争を経て、イギリス陸軍は常に議会と国民に責任を負ってきたからです。
逆に言えば、海軍は王室に責任を負ってきたことになります。空軍は現代に入って創設され、すでに国王ではなく国民国家に責任を負う軍に変わっていましたが、海軍同様にロイヤルの名を冠しています。
イギリス国王が君主を兼任する英連邦の自治領諸国でも、こうした伝統に従っています。カナダ、オーストラリア、ニュージーランドでも陸軍にはロイヤルの名は冠されませんが、海軍と空軍には冠されます。
イギリスにおける国王と議会の対立という歴史を有していない王制諸国では、こうした伝統に従いません。サウジアラビアの陸軍はRoyal Saudi Land Forcesと呼ばれますが、オランダやカンボジアでは陸軍はそれぞれの国名を入れてRoyal DutchあるいはRoyal Cambodian Armyと呼ばれます。それぞれ文化圏が違う国ですが、特殊な歴史的背景がない限りは陸軍だけが別の呼び名にならないようです。
ただし、王室があってもスウェーデンのように、どの軍にもロイヤルの名が冠されない国もあります。ともかく、軍の呼び名にもその国の歴史が反映されているのは興味深いです。